『口唇口蓋裂に向き合うということ』後編 ~Leonine interview vol.2
- 2018年10月31日
- LeonineAdmin
ーー現在の高校生活はどのような生活ですか?
凪:高校は第1志望の高校には入学できませんでしたが、部活にも入って友達も増え、
男子とも頑張って関わろうとしています。
ほかのクラスではいじめのようなことがあったようですが幸い私のクラスでは無くて、比較的平和でした。
病気のこともある程度話せる友達も出来ました。
でもやはりまだ周りの目が気になって「変に思われてないかな」など思う時もあります。
たぶんまだ完全に傷が癒えたた訳では無いようです。
高校では5回手術をしましたが、先生も理解してくれ、友達もノートを見せてくれたりお見舞いに来てくれました。
今は大学に向けて勉強を頑張っています。
ーー現在はかなり落ち着いていらっしゃるように見えますが、今はどのように感じていますか?
凪:昔はとても辛かったけど、今考えるとすごい人生経験だったのかなと思います。
でも、それは単なる建前で、対人というよりは、
心の奥底では自分の事を認めきれていない何かが渦を巻いているのかもしれないと思いました。
ーー対人というよりは、自分自身のことですか?
凪:もっと可愛くなりたい。普通になりたい。と思う時があります。
思春期の時より、そう思う頻度や強さはだいぶ弱くなっているとはいえ、
そのように思っていることは事実です。
また、街中で同じ口唇口蓋裂を持っている人を見ると過剰に反応してしまいます。
気まずいな、相手は気づいてるかな、できれば関わりたくないな、と言う様に、
同じ口唇口蓋裂を持っている人を避けてしまいます。
言い方に語弊があるとは思いますが、そう思うのはきっと、
自分のような弱い者同士が仲良くしていると、まるでお互いの傷を舐めあっているかのように思えて、
傍から見るととても見苦しいと思われてしまうのではないか、と思っているからだと思います。
弱い人達が集まっていると、強い人(健常者)に馬鹿にされるかもしれないという恐怖が、
先程言った渦の魂胆かも知れません。
それは、昔受けたいじめのトラウマからそのような思想が生まれてきたのだと思っています。
ーーそれが『偏見』なんですね。
凪:だから私は、口唇口蓋裂の人を避け、哀れみ、結果的に差別をしているのではないかと思いました。
そのようなことから『口唇口蓋裂に1番偏見を持っているのは実は自分なんじゃないかと思う』という言葉が
出てきたのではないかと思います。
もちろん口唇口蓋裂を持っている人だけでなく、身体障害者を持っている人、精神疾患を持っている人、
そういう人もきっとその対象に入っているのかもしれません。
私は自分が弱いから、もっと弱い人間を見下す最低な人間です。
本当はこういうことを思いたくありません。
でもそれはきっと仕方がないことで、それを変えるためには
自分の心の奥底から変わらなければいけないのだと思っています。
ハンディを持っている人の大半は「自分に自信が無い」割合が多いのだと思います。
自分に自信が持てればきっと、もっと人生が輝くのではないかと想像しています。
自分を認めること、理解すること、これが簡単なようでなかなか出来ないものです。
自信を持とうとしても、幾多のトラウマや苦い思い出に邪魔をされてしまいます。
『口唇口蓋裂に1番偏見を持っているのは実は自分なんじゃないかと思う』
もし仮にこれが事実だとして、偏見を持っているとしても、私は変われると思います。
それに気づいたということもまたひとつのステップアップに繋がるのではないかと思いました。
だから私は、それをマイナスと捉えず、大きな成長の1歩として自信を持って言います。
口唇口蓋裂に1番偏見を持っているのは、自分自身でした。
これから私はきっと、何十年もかけて自分と向き合って行くと思います。
そしてそれを達成して初めて素敵な人間になれるのだと思います。
私は、この世界には困難を抱え、それを乗り越えた人にしかなれない何かがあると信じています。
だから私は、私だけでなく病気で悩み苦しんでいる人達が、いつか「この病気のおかげだった」と
笑い飛ばせる日が来ることを僭越ながら、夢見ています。
ーーなかなか言いにくいことを、素直に語ってくださってありがとうございます。
しっかり後ろ向きな想いを語ってくださった分、前向きになるための必要なことがわかった気がします。
ありがとうございました。
それから、もう一つお願いします。
レオナインは当事者さんはもちろんなんですが、親という立場で口唇口蓋裂に関わっている人も多く見ています。
親御さんとの関係を教えていただけませんか。
凪:親とは病気のことを普通に話してます。基本的には私が一方的に言っている感じです。
時間がある時は夜中まで話に付き合ってくれます(主にお母さんが)
お父さんは、私が娘だということもあってなかなか話せないのもあると思うし、
少し不器用なとこもあると思うので、だからやはり、深く話をするとなるとお母さんが多いです。
でも、入院した時とかにお父さんが何かしたそうにソワソワしてるのをみて、
お母さんと顔を見合わせて笑っています(笑)
親への不満は、ないという訳では無いですが特にこれと言った問題もないですね。
私が生まれた時の話を何回聞いても包み隠さず教えてくれます。
病気で生まれてきた私を見て辛かったとか悲しかったとかそういうマイナスな言葉は聞いたことがないです。
大抵「可愛かったよ」とか「嬉しかったよ」などの言葉を、本当に本心から言ってくれているような気がします。
私が「口唇口蓋裂の私をみてびっくりしたやろ」と聞くと、
「びっくりしたけど、やっぱり自分が産んだ子供やけんかわいかった」と言ってくれました。
そう言ってくれるだろうと思っていたので、本当にそのような類のことを言ってくれて、
その度に、本当に少しずつですが自信がついていくような気がします。
また、親戚からもマイナスな言葉は一切聞いたことがなく、可愛い可愛いと言われて育ってきました。
手術の時もお見舞いに来てくれたり応援してくれたりして、私は本当に恵まれているなと感じました。
もしそれが建前で、内心ではびっくりしたり辛かったり悩んでいたとしても、
私たち子供としてはとてもありがたい嘘だと思います。
もしその優しい嘘をついているとしたら、私が大人になって、もう少し自立して、
自分に子供ができた時ぐらいに真実を打ち明けて欲しいです。
今の自分には受け止めきれないとしても、その時にはきっと分かってあげられると思います。
病気で生まれてきた子供をみて、喜びしかない親なんていないと思います。
やはり、不安だったと思うし心配で夜も眠れなかったと思います。
だけど、そんな私の全てを認めてくれる親には感謝の気持ちしかありません。
私がどれだけ酷い言葉を言っても全て受け止めてくれました。本当にすごいと思います。
親にはまだまだ反抗するし、迷惑もかけると思いますが、精一杯甘えたいと思います。
面と向かっては言えませんが、私は両親を、本当に尊敬しています。
ーー本当にありがとうございました。またお話し聞かせてください!
凪twitter @kousin_girl
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