口唇口蓋裂とは?

口唇口蓋裂って?治療は?医療保障は?
まずは基本を押さえよう!

治療は長く大変ですが、仲間はたくさんいます。みんなで支え合いながら乗り越えましょう

口唇口蓋裂は、医療機関ごとに方針があり、裂の位置や幅など症状によっても治療方針が変わる可能性があります。
本サイトでは「診療ガイドライン」を参考に、口唇口蓋裂に関する基本的な情報をご紹介します。

口唇口蓋裂とは?

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)とは、胎児の唇や歯茎、上あごが、お腹の中で成長するときに真ん中でくっつかずに、割れたままの状態で生まれてくる先天性顔面疾患です。日本人では約400人~600名に一人の割合で生まれてくるといわれており、その原因は多因子のため、多くの場合不明です。

裂の位置により呼称があり、唇の裂を口唇裂(こうしんれつ)、歯ぐきの裂を顎裂(がくれつ)、口蓋(こうがい)の裂を口蓋裂(こうがいれつ)と呼び、それぞれ完全、不完全、左側、右側、両側を付記して表記されます。

裂の位置や幅などによっても影響度に差があるため、早期に信頼できる病院で診察を受け、治療方針の相談をすることが重要です。

<参考情報>
手術内容は医療機関の方針により異なりますが、下記のサイトでは、治療の流れが画像付きで分かりやすく紹介されています。
○宮崎大学医学部附属病院
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/oral/general-one/alveolar-cleft/
下記のサイトは治療に関するQ&Aが非常に参考になります。
○長野県立こども病院口唇口蓋裂センター
http://www.nclp.jp/

口唇口蓋裂による問題

1.哺乳

口蓋裂の赤ちゃんは、鼻腔と口腔がつながっているため吸いつく力がとても弱く、哺乳が難しいケースが多いです。十分に哺乳できないため、授乳中に赤ちゃんが疲れて寝てしまったりするなど、なかなか必要な量を授乳することができません。
体重の増加量などを測り様子を見ながら哺乳を行っていくことになります。
なお、哺乳の補助として、ホッツ床を装着することが多く、ホッツ床で裂け目を塞ぎ、赤ちゃんの哺乳を助けます。
哺乳の問題は、授乳をさせる母親にとっても大きなストレスとなるため、この問題を改善することは母子双方にとって有益です。

口唇口蓋裂の赤ちゃん専用の哺乳用品が販売されていますので、哺乳にはそれらを使用することが多いです。
これらの哺乳用品には逆流防止弁や、乳孔が大きくミルクが出やすくなっているものがあります。

 

ピジョン 口唇口蓋裂児用哺乳器
http://products.pigeon.co.jp/item/index-718.html
NUK 口蓋裂用・口唇裂用乳首

http://www.nuk-japan.jp/product/index.html
ジェクス チュチュベビー 口蓋裂用乳首メディカルタイプ

http://chuchubaby.jp/products/milk/medical/index.html

2.発音

裂があることで、空気が漏れてしまい、発音に影響が出ることがあります。
特にパ行、タ行、カ行、サ行の発音が難しいケースが多いようです。
口蓋裂の手術の最大の目的は適切な発音機能を獲得することにあり、その後に言語治療を行うことで良好な発音機能を獲得できます。
口唇口蓋裂の治療は多くの病院がチームで対応されているため、早期に言語聴覚士の方とコミュニケーションをとり理解をしておくべき知識や子どもの発達状況、機能訓練方法について確認しておきましょう。
言語治療は大体4歳くらいから本格的な治療、訓練を開始し、小学校入学前にはほぼ通常言語の獲得ができると言われています。


3.中耳炎

口唇口蓋裂患者は、滲出性中耳炎にかかりやすいといわれています。これは、中耳の耳管(口と耳を結ぶ管)の開閉を行う筋肉の働きが弱いことや、口蓋裂の影響で本来の位置からずれているといった原因からです。
口唇口蓋裂の赤ちゃんの半数以上が中耳炎になると言われていますが、言語の発達において非常に重要な時期にあるため、注視していくことが必要です。
症状が改善しない場合には、鼓膜にチューブを挿入する場合もあります。
耳鼻科には頻繁に通う必要があるため、口唇口蓋裂の治療を行う病院がお住まいから遠い場合は、自宅の近くに信頼できる掛かりつけの耳鼻科の病院を作っておくとよいでしょう。


4.歯並び

上の歯の歯並びが悪くなったり、受け口になったりします。また歯の数が足りないこともあります。
咀嚼にも影響が出る上、歯ブラシなどもしづらく十分なケアが行えず虫歯になりやすい傾向にあります。虫歯の予防には日々のケアが重要なため、歯科のアドバイスを受けることをお勧めします。
早ければ4歳頃、だいたい6,7歳から歯並びの矯正の治療を受け、歳6~10歳頃には、裂により骨が欠損している部分に骨を移植する手術(顎裂部骨移植術)を行います。


5.心理的影響

適切に治療を行っていくことで、傷はほとんど目立たないように治ると言われていますが、治療は長期に渡り、見た目や言語の問題を抱えながらの生活になるため、コンプレックスを抱いてしまう可能性があります。
しかし青年期まできちんと治療を行うことで改善できるので、必要以上に深刻に捉えず、前向きに治療と向き合っていくことが大切です。

口唇口蓋裂の原因

口唇口蓋裂のはっきりとした原因は不明と言われています。赤ちゃんの顔は妊娠初期に形を整え始めます。
はじめはみんな唇や口蓋が離れていますが、口唇は4~7週頃、口蓋は7~12週頃、だんだん真ん中に寄ってくっつきます。
その時期に何らかの原因で、上手く形成されなかったものが口唇口蓋裂です。
その原因は多因子で、遺伝、服薬した薬物の影響、喫煙、ストレスなど、さまざまなものが挙げられていますが、一つの要因で発生するものではないとされており、現状では特定することはできません。

口唇口蓋裂の治療とスケジュール

口唇口蓋裂は長期にわたる治療が必要になります。その治療方法は、症状や各病院の治療方針によって異なりますので、以下は一例となります。

乳児期に行われる治療

出生後、赤ちゃんが哺乳が困難な場合には、哺乳指導が行われます。症状に適した口唇口蓋裂用の乳首が用い、また哺乳の補助やあごの矯正のためにホッツ床と呼ばれるマウスピースのようなものを口蓋裂に装着し、症状の改善を図ります。
鼻の変形が見られる場合には、ナムという外鼻矯正を目的とするステントを装着することもあります。
その後、生後3~6か月ほど、体重6キロを目安に口唇裂の手術を行い、1歳~1歳6か月になると口蓋裂の手術を行います。病院によっては、口唇裂と口蓋裂の手術を一度にまとめて実施することや、口蓋裂の手術を2度に分けて実施することもあります。口唇や口蓋の裂けている部分がふさがれることにより、咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)障害の改善だけでなく言語・発音障害の改善が図られます。

小児期に行われる治療

口蓋裂の手術後、2~3歳頃から、言語聴覚士によることばの管理やトレーニングがはじまりますが、4歳頃になると本格的な治療や訓練が行われます。それにより小学校入学前後にはほぼ正常言語の獲得ができるようになりますが、その後も課題がみられる場合は、治療を継続し、症状によっては2次手術(咽頭弁形成術など)が必要なこともあります。
また4~5歳になると、レントゲン写真を元に歯科治療の治療計画を立て、必要であれば、装置を使って狭くなった歯列を広げたり、上あごの成長を促がすための矯正治療を行います。
顎裂部に骨移植術が必要な場合には、6歳~10歳ごろに行います。これは前歯や犬歯がきちんと生えてくることを目的としています。

青年期以降に行われる治療

成長に伴い口唇の変形や鼻変形が見られる場合は、この時期に口唇および外鼻変形に対する最終的な修正手術を行います。歯の欠損や形成不全が見られる場合は、良好な歯列を得るためにインプラントなどの治療をすることもあります。
また歯並びの治療や顎裂部の骨移植などの治療をおこなっても反対咬合が残った場合には、あご矯正手術で上顎骨や下顎骨の位置の移動させる事により改善を図ります。
手術は下顎骨の発育がほぼ完了し、顔の成長が終わる18歳頃に行います。

治療を受ける診療科

口唇口蓋裂の治療には非常に多くの科が関わります。各専門医の方のチームで対応される病院が多く、病院や各チームによって治療方針が異なりますので、十分なコミュニケーションをとって治療方針を決定されることが望ましいです。

形成外科 口唇形成術、口蓋形成術、顎裂骨移植術などの手術
歯科口腔外科 歯科矯正、顎矯正
小児科 診断・治療、発育状況の観察など
耳鼻咽喉科 中耳炎の治療、鼻咽腔閉鎖機能の検査など
リハビリテーション 言語訓練

医療費補助制度

口唇口蓋裂の治療に関わる入院手術や矯正治療の費用については保険治療の範囲内で、殆どの治療は乳児医療や育成医療、高額医療制度などが適用可能です。
ここでは代表的な制度について紹介します。収入やお住まいの自治体によって条件が異なりますので、まずは自治体へご相談ください。

1. 自立支援医療(育成医療)

定められた特定の疾患によって障害を有する患者さんに対して、国が治療費の一部を負担する制度です。
口唇口蓋裂はこの制度の対象となる疾患に認定されており、全ての手術、また言語治療や矯正治療についても、医療費補助の対象となります。

補助を受けるには下記条件があります。

<条件>
・所得に応じて一月あたりの負担額が設定されており、規定以上の所得の場合は対象外となります。
・育成医療は18歳の誕生日を迎えるまでの治療のみが対象です。18歳以上の場合、厚生医療の制度が使えますが、こちらは身体障害者手帳が必要です。
・育成医療の指定を受けた医療機関での治療のみが対象となります。

なお、育成医療の申請に必要な用紙は、所轄の保健所あるいは市役所に用意されており、必要事項を記載(医師の意見書は担当の医師の記入が必要)の上、市役所に提出して申請を行います。また事前申請が必要なので、早めに手続きを行いましょう。

2. 乳幼児(小児)医療費助成制度

市町村が行っている医療費補助制度で、対象の子供にかかった全ての医療費を全額補助してくれます。
この制度は各自治体によって大きく異なり、適応される年齢や収入による制限など、市役所の窓口で確認する必要があります。
この制度では申請には担当医師の証明などは必要ないので、早めに手続きを行いましょう。

3.高額療養費制度

医療機関や薬局の窓口で支払った額(※)が、暦月(月の初めから終わ りまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。
1,2で保障されない場合や、組み合わせて利用することも多いため、病院や自治体へ確認しましょう。

【参考】
高額療養費制度を利用される皆さまへ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf