口唇口蓋裂の治療との付き合い方(前編)~平山由香さん(『ほほえみの会』代表


  • 2021年2月23日
  • LeonineAdmin

2020年11月28日に開催されたオンラインcamp(交流会)のゲストは、広島で活動していらっしゃる口唇口蓋裂の会『ほほえみの会』代表で、ご自身が口唇口蓋裂患者でもある平山由香さんでした。治療のこと、修正手術のこと、思春期のこと、様々なお話をしていただきました。当日のトークセッションの内容を公開いたします。<前編>

ーー本日のゲストは『ほほえみの会』代表で一児の母であり、歯科衛生士でもある平山さんです。今日は色々お伺いさせていただきます。よろしくお願いします。

 

平山さん:よろしくお願いします。

 

ーーまずは疾患の種類と、治療歴を教えてください。

 

平山さん:はい。両側不完全唇裂、口蓋両側硬軟口蓋裂、左顎裂です。生後3か月で口唇裂、1才で口蓋裂、4才で耳の軟骨を使用して瘻孔、9才で顎裂の手術。そして14歳で上下の骨切りをしています。ただ切ったのではなくて、下あごの切り出した骨を上に移植して上あごを前に出すという手術をしています。それで大きな手術は終了という形なのですが、骨切りした場合、プレートが入るんです。その1年後位に除去手術というのを受けるのですが、私は手術をしたくなかったので、プレートの除去手術はしていません。その為、プレート6枚とボルト24本が、そのまま入りっぱなしです。その後、成人してから鼻の修正手術を2回しています。現在は一区切り、一段落といった形なのですが、口蓋に瘻孔はあって未閉鎖という状況です。食事の時は、常に鼻から漏れるという感じですが、手術をしても完全に閉鎖される保証はないと言われたので、今後、閉鎖するような手術をする予定はしていません。

 

ーー事前アンケートで、修正手術についてお伺いしたいと書いていた方もいらっしゃったので、まずは修正手術についてお伺いしたいと思います。基本的に今お話を伺っていても、現在の治療やオペの流れと大きく変わらないのかなと思います。14才で上下の骨切りの手術をやっているということですが、女の子は早いとよく聞いたりもします。14才位というのは妥当な年齢なのでしょうか。16才位というのもよく聞きます。

 

平山さん:骨切りの手術というのが、その人の骨の成長が終わらないとできないんですね。ですので、女の子だと割と早い傾向にあるのですが、個人差があるので、矯正などに行って、ある程度骨の成長が終わっているというのを確認してから、するようにはなります。やはり男の子だと高校3年生位で受けている子もいて、そこは個人差があるのかなと思います。

 

ーーなるほど。今、オペのことをお伺いしましたが、歯科矯正は何才位から始めましたか?

 

平山さん:小学校に上がってから成人するまで15年位はしていました。矯正した後に、後戻りを防止するような装置をつけている子もいましたが、私は今のところ何も入れていません。上下の骨切り手術をして歯並びを最終的に整えた段階で、私は治療を終えています。

 

ーー歯科矯正は、治療期間が15年とかなり長くかかりますが、その中でもどの時期が一番辛かったですか?

 

平山さん:矯正は、常にちょっと調整して入れる、調整して入れる、新しい装置が入る、ということの繰り返しです。やはり新しい装置が入ってからの1週間や、針金を調整してからの1週間というのは、食事も辛いし痛いです。もう全体的にすごく痛くて、本当に寝れないこともあったので、どの時期かというよりも、調整してからの1週間というのは、ずっと辛かったです。矯正をしている限りは辛かったなという思い出ですね。

 

ーー私たちスタッフの中にも、母親になってから歯科矯正を始めた人がいて、それがもうすごく痛くて辛いって言っています。だから、子どもが始めた時に辛いんじゃないかという不安があります。調整して1週間位で馴染んで、次の調整までの間は少し楽になったりというのはあるんでしょうか?

 

平山さん:そうですね。やはり歯が動く期間が一番痛いので、それが終わった後というのは、つまり、その1週間後というのは、ただ装置が入っているだけという状態なんです。もちろん唇を噛んでしまったりということもあるんですけど、基本的には、それ以降は私の場合、生活に大きな変化があったりというのはありませんでした。

 

ーー平山さんは、お話をしていても発音に特徴的なものは全く感じられませんが、言語訓練などはされていましたか?

 

平山さん:生まれてから小学校に上がるまでに何回か受けていたそうですが、私の中では記憶がありません。母からは、何回か言語の方に、広島大学病院の方に行っていたと聞いています。

 

ーーということは、言語訓練をたくさん受けた記憶というのは、全くないんですね。

 

平山さん:そうですね。

 

ーー今はまだ瘻孔があるということですが、しゃべりにくいということはあるのでしょうか?

 

平山さん:瘻孔があるからといって、しゃべりに支障をきたす感じではないです。見ても本当に分からないくらい、本当につまようじの先がちょっと入るくらいの隙間なので、大きい穴ではないんです。ですので、発音に何か関係があるような感じではありません。

 

ーー例えば、修正手術をした時に、ちょっとしゃべりにくくなったなということはありませんでしたか?

 

平山さん:そうですね。ただ、この辺(口の周りを触るジェスチャー)のオペって縫ったり切ったりするので、その影響で術後はしゃべりにくかったりご飯が食べづらかったりということはもちろんありましたが、それ以降で困ったりしたことはありません。

 

ーーやはり、私たち親も関心があるのが修正手術なのですが、先程、成人してから2回鼻の修正手術をされたということですが、どのような内容でしたか?

 

平山さん:口唇口蓋裂というのは、成長過程でくっつかなかったものなんですね。鼻や口って、左右のほっぺたから突起が伸びてきて、くっつくんです。
くっつかなかったので、鼻が横に伸びてしまうんですね。裂があるほうにけっこう傾いたり、どうしても歪んでしまうというのが1つと、手術した後は一旦綺麗になるのですが、成長過程で皮膚が引っ張られてしまい、それでまた歪んでしまったり、唇が引っ張られたりして歪むというのがもう1つの原因として挙げられます。このように、どうしても鼻が歪んでしまうので、鼻を小さくするような手術、寄せてあげるような手術をしています。あとは、ここ(鼻の下から口唇部分)を綺麗にするような手術をしましたが、それでもどうしてもボコボコしているようにはなってしまっています。なかなか綺麗に戻すというのは難しいですが、鼻周りを綺麗にするという手術を2回しています。修正手術は自分から希望しましたが、やはり母親もしてほしいと思っていて、できることなら綺麗にしてあげたいというのが親の希望でありました。私としては痛い思いをするのは自分なので、自分が気になっている部分が治ればもういいと思っていましたが、母はもうちょっとやってほしいという思いが今もすごくあるようです。ただ、自分が瘻孔も含めてもう希望していないので、今後もう手術はしなくていいかなと思っています。やはり『ほほえみの会』での交流会の時も、お母さんはすごく希望しているのに、お子さんはあまり気にしていないという、すれ違いのケースがけっこうあるので、そこはしっかり話し合える環境なら話し合って頂きたいですし、もし親御さんが気になるようであれば、担当医の先生などに親御さんの方から相談したりするのもOKだと思います。保険も効くし、美容整形をするという選択肢もあります。お子さんに直接言い出せない場合は「ここが気になるのですがどうでしょうか?先生」という感じで先生に相談すると、先生がうまい具合に本人に聞いてくださると思います。

 

ーー平山さんは、ご自身から修正手術がしたいとお母様にお話しして、お母様もそれじゃあやりましょうということでしたが、結構逆のパターンもあって、親があまり気にしていないという話も聞きますよね。そうすると子どもが言い出しにくくなってしまったりします。親としては、本当は気にしているけれども子どもが言うのを待っている、などそういう場合もあると思うので、主治医の先生と話しておくというのは…

 

平山さん:先生をうまく使う!

 

ーーなるほど(笑)

 

平山さん:歯医者でもよくありますが、先生や看護師さんをうまく使ってもらって全然OKだと思っています。「綺麗に整えない?」とストレートに言われると「あぁ、歪んでいるんだ」と思ってしまうので、そうではなく、治療の延長として「こういう手術があるんだけどどうする?」など、先生をうまく利用して言ってもらうのが良いと思います。

 

ーーなるほど。それは、親は修正手術をやらなくてもいい、本人はやりたいという場合においても、本人から先生に言って、先生から親御さんに伝えてもらうというやり方もできるということですね。

 

平山さん:そうですね。あと本人が言い出せない理由として、お金のことが心配だったりします。やはり、手術はどうしてもお金がかかるイメージがあります。だから、気にはなっていても、お金がかかるから手術をしたいと親に言い出しにくいというのもよく聞いたりします。「保険で出来る範囲もあるので、お金の心配はしなくても大丈夫だよ」ということを伝えておくと、子どもから言い出してもらうきっかけに繋がると思います。
ですので、1つは先生を使って誘導すること、もう1つは、こちらから少し触れてきっかけを作ってあげること。それがあると、本人としては少し楽かなと思います。

 

ーーそうですね。よくネットなどでも、年頃になると、特に男の子は親とコミュニケーションをとらなくなって、オペに大金がかかるんじゃないかという認識をしている子を目にする機会があります。ですので、親の方から「大丈夫だよ」と伝えてあげる…そういう場合は、具体的な金額を伝えてあげた方がいいのでしょうか?

 

平山さん:その人その人によって手術の内容は全然違いますし、とる点数というのが違いますので、ざっくりこれ位だと伝えるのは難しいと思います。ただ「保険が効くから今まで通りだよ」と、特別何かするわけではなく「今までと同じだよ」と言ってもらえると、今までと同じということは大丈夫なんだって思えて安心します。あとは、今ですとSNSなどで検索したらすぐ出てくるので、本人もたくさん調べていると思います。ただ高校生だと、まだ未成年ということもあり、お金の問題もあるので「大丈夫、大丈夫。心配しないで」と言ってあげると、本人としては環境が整うので言い出しやすいと思います。

 

 

後編へ続く(後編:http://leonine-clap.org/hohoeminokai-hirayamasan2/

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