第8回Leonine Online CAMP:当時者さんInterview<むぎちゃん>後編


  • 2021年12月15日
  • LeonineAdmin

第8回Leonine Online Campにて、口唇口蓋裂の当事者であり2児のお母さんでもある【むぎちゃん】に 恋愛のこと、思春期の話、結婚や出産など、普段なかなか聞けない本音を語って頂きました。本コラムでは前編・後編に分けCampでむぎちゃんにお話いただいた内容をご紹介いたします。女性として、母として、学ぶこと、考えさせられることが多くあります。ぜひご一読ください。

では次の質問です。

『お友達関係がどうだったかなど、家族以外との関わりについて聞きたいです。』

 

むぎちゃん:学生時代は、特に不登校になることもなく通っていました。友人は少ないわけでもなく、今でも高校時代や大学時代の友達と遊んだりしています。高校時代は部活動でキャプテンを、大学時代は飲み会の幹事を積極的にしていました。口唇口蓋裂だからどうというよりも、長女気質なところが影響していたのだと思います。

 

――続いての質問です。

『5歳の娘は左側完全口唇顎裂です。年明けに骨移植を控えており、そろそろ告知をと考えています。親から告知された時のことを覚えていますか。それは何歳でしたか。また治療している中で親にしてもらえて嬉しかったこと、こうしてくれたら良かったのにと思うことがあれば教えてください。』

 

むぎちゃん:『さっちゃんの魔法の手』という先天的に手の指が欠損している女の子の絵本を保育園時代に読んでもらい「むぎもな〜」と伝えられた記憶が微かにあります。おそらく4~5歳くらいの時だと思います。うっすらとした記憶なので具体的なことは覚えていませんが「ふーん、そっかぁ」と思うくらいには認識していたような気がします。
してもらえて嬉しかったことは、通院や入院の間は母を独り占めできたことです。あとすごく当たり前のことですが、妹たちと分け隔てなく特別扱いせずに育ててくれたことです。あとは、生まれた時につけていた母の手記が私の宝物になっていて、中高生くらいの辛い時に読み返しては、泣きながら母の愛を感じていました。今も、私自身の通院や入院の間は、子どもの面倒を見てくれたり家のことをしてくれたりしているので助かっています。

こうしてくれたら良かったのに、ということに関しては、当時ネットも普及しておらず患者会にも参加していなかったので、横の繋がりがありませんでした。先生の言うことは絶対で、もっと良い治療法はないかなど、母が主体となって調べる様子はありませんでした。
中高生で悩んでいた時期は、私から母に相談することもありませんでしたし、一人で泣いては咀嚼してやり過ごしていました。そもそも親に話す内容でもないし、そんな年齢でもないと思っていました。半年ほど前に腹を割って母と話をした時に、私がそうやってやり過ごしていたことを母は全然知らず「もっと自分から歩み寄ってあげればよかった」と言っていました。ただ、母も当時は仕事と家庭の両立で日々忙しかったので仕方がなかったと思います。

 

――続いての質問です。

『成人してある程度治療が落ちついた現在、疾患に対して何を思うのか。また日常生活で疾患があったことでネガティブな思いが出てくることはあるのか。あればどんな時にでてくるのかを教えてください。』

 

むぎちゃん:口唇口蓋裂で生まれたくなかった、もし普通の顔だったら、という思いは根底にずっとあります。それは一生消えることはありません。口唇口蓋裂でも幸せですが、口唇口蓋裂で良かったとは一度も思ったことはありません。もし疾患がなかったら、こんな痛くて辛い思いをしなくて済んだし、周りから傷付けられることもなく生きてこられたのだろうなと思います。でも両親を責める気持ちは全くなく、むしろ感謝しかありません。口唇口蓋裂で生まれたことに関しては誰にも落ち度はない。ないからこそ、行き場のないモヤモヤした思いや、なんで私だったんだろうという思いは消えません。たくさん泣いて辛い思いもしました。誰かを悪者にして責めるほうがよっぽど簡単で生きやすいです。でも、嘆いても口唇口蓋裂からは逃れられない、もうどうしようもないという諦めと絶望とともに、今は悟りの境地に立っています。だから初対面の人に対しては、色々思われたとしても仕方がない、早く慣れてねと思っています。
ネガティブな思いに関しては、日常生活において、リップメイクのHow to動画を見たり、今のコロナ禍ですと、綺麗な顔の人が人気がない場所でマスクを外していたりするのを見ると羨ましいなと思います。でも普段は口唇口蓋裂であることを忘れていますし、特に意識することもありませんが、すれ違いざまや初対面の人の何気ない視線に「あ、そういえばそうやった」と感じることはあります。「だって、どーしようもできひんやん」と、あっけらかんとできる時もあれば「鼻がなんでこんな非対称なんやろ」「もっと綺麗な当事者もいるのに」と落ち込む時もあり、きっとこの感情の波は一生付き合っていくものだと思っています。

 

――むぎちゃんのお話を聞いて、表面上では分からなくても、子どもが疾患のことをずっと気にし続けているかもしれないということを、私たち親は忘れてはいけない、と改めて思いました。

 

続いての質問です。

『当事者同士で繋がったきっかけや、当事者同士だからこそ気を遣うことなどがあれば聞いてみたいです。』

 

むぎちゃん:笑みだち会の本人の部に参加したのがきっかけで、他の当事者との繋がりが持てました。あとはTwitterやInstagramがきっかけでやり取りをしている当事者の方もいます。当事者だからこそ気を遣うところは、一概に口唇口蓋裂と言っても、例えば両側か片側か、重度軽度の具合、各々のコンプレックスも様々なので、相手が悩んでいるであろう部分に共感できないこともあります。相手が本気で悩んでいるコンプレックスの部分に対して「私はそんな風に感じたことがない」と自分の価値観で評価してしまうことのないように気をつけています。あと、言葉選びにも気を遣うようにしています。
当事者同士でも共感できる部分とできない部分があり、こんなにも価値観が違うのか、と交流していく中で感じたことは自分の中での新しい発見でした。当事者同士と言っても同じ疾患という共通項しかないので、価値観が違うのは当たり前のことなのだと気づきました。

 

――次の質問です。

『口唇口蓋裂関連以外の病院にかかる時に、自分が口唇口蓋裂であることを伝えていますか。診療する科によっては伝えない場合もあるのかを聞きたいです。あと細かいのですが、言葉の表現として「口唇口蓋裂です」もしくは「口唇口蓋裂でした」のどちらで言っていますか。』

 

むぎちゃん:例えば、問診票に記入する際は、手術歴を書く欄もあるので基本的に口唇口蓋裂であることを伝えています。わざわざ隠す必要もないと思っています。言葉の表現としては、今まで意識したことはありませんでしたが「口唇口蓋裂でした」だと後遺症もなく完治したイメージが強い気がするので、自然に「口唇口蓋裂です」と言っています。

 

――私自身も毎回、予防接種の問診票にある『出産時に異常がありましたか』の欄にどう書くべきかを迷っています。皆さんはどうされているのかを今度聞いてみたいです。
では次の質問です。

『機能面で不自由だと感じることはありますか。また過去にありましたか。治療によって改善されたこともあれば教えてください。』

 

むぎちゃん:機能面に関しては、少ない回数の手術で済んでいるので特に不便を感じたことはありません。強いて言うなら、花粉症の時期や風邪をひいたときに副鼻腔炎になりやすいことくらいです。鼻中隔湾曲があったり、口蓋裂の影響で耳管の通りが悪かったりするので、きっと耳鼻のトラブルとは一生仲良しなんだろうなとは思っています。

 

――みなさんからの質問は以上です。

今日は恋愛のことや思春期のお話、結婚や出産のことなど、普段なかなか聞けないことを本音で語って頂きました。

たくさんの質問に答えて頂き本当にどうもありがとうございました。

 

むぎちゃん:ありがとうございました。

 

<前編はこちら>

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