『口唇口蓋裂児の子育て』前編 ~Leonine interview vol.4
- 2019年7月12日
- Leonine
ーーテーマは『乳幼児期に親が後悔しないこと』を主体に『就園〜思春期のこと』をお伺いしていきたいと思います。
早速ですが、きゅうさんの自己紹介をお願いいたします。
★きゅう:大阪府在住です。高校1年生の発達障がいを抱える息子と、
小学6年生、右側完全・左側不完全の両側口唇口蓋裂の息子。2人の息子の母親です
次男の手術歴は、口唇形成術(3か月)軟口蓋形成術(11ヶ月)中耳炎によるチュービング(1歳)
硬口蓋形成術(1歳半)オトガイ骨移植(8歳9ヶ月)で現在は歯科矯正中です。
ーー最初の質問です。私の息子はまだ3歳で、小学校高学年なんてまだまだ先のような気がしますが振り返ってみて長かったですか?
★きゅう:振り返るととても早かったです。第二子という事や、
上の子にも手がかかると言う事情もあるかもしれませんが
次男は公立の幼稚園だったので2年制でしたが、就園してからは本当に目まぐるしく日が流れました。
まずは入園時に園の担任の先生に口蓋裂とは何ぞやと言う説明をし、それによる注意点などを伝えました。
それからその後、今に至るまで、内容は治療に合わせて変化しつつも、
毎年担任が変わる度に繰り返されるので、通院の度に園や学校に伝える内容を考えながら医師の説明を聞いたりしています。
親子共に学校に慣れ始めた小2頃、骨移植の日取りが決まったので、
それまでの健康や怪我への留意が乳児期より格段に上がり、学校の先生とのやり取りも増え、
日々慌ただしく過ごしているとあっとゆー間に手術(小3)。
手術が終われば食事(給食)の事、体育の事、休み時間の過ごし方など、
学校に協力を仰ぎながらの生活だったので、目の前の事、今出来る事をするのに精一杯でした。
それまでは目の届く範囲で親である自分が注意すれば良かった事が、
団体生活が始まると子供本人に言って聞かせなければならなくなります。
術後はもちろん、術前の体調管理などもある程度本人に委ねないといけないので
乳幼児期の親の体力的な大変さから精神的な大変さへ移行しました。
硬口蓋の形成術が終わって7年の空きがあったわけですが、
その間は子供自身もまだ色々と発展途上なので
最善の過ごし方を日々模索しながら過ごしていたら「え?もう手術?」と思った程でした。
そして今も、もう手術から4年も経過した事が信じられない位です。
ーー想像するだけでくらくらします…
親が完全主体の幼児期のママに対してアドバイスはありませんか?
ご自身はどういったことに気をつけて治療に当たりましたか?
★きゅう:次男が幼児期に私が常に念頭に置いていたのは
「今の私の頑張りが次男の将来を左右する」って言う事です。
言って聞かせて分かるわけじゃない分、難しい部分でもあるのですが、
逆に言えば、だからこそ「慣れ」させてしまうしかないと言うか。
ホッツ床をベェっと出してしまったり、レチナが鼻水で押し出されてしまったり、
顔をこすりつけてテープがベロンと剥がれてしまったり、皆あるあるかなーと思います。
ホッツ床を装着する時にイヤイヤと顔を振って抵抗され、ギャン泣きされると可哀想になっちゃうし、
何度もレチナやテープを貼り直してると赤ちゃんのデリケートな肌は途端に傷んでしまいます。
本当に、何でこんな思いをさせなきゃいけないんだと悲しくなる事もありましたが、
「今、ここを耐えたら、裂が寄って手術が楽になる!」
「鼻の穴が少しでも整ったら修正手術も楽になる!」
そう自分に言い聞かせながら、
ホッツ床なら、押し出すのを諦めるまで口に指を突っ込んで押さえ続けたり、
テープの貼る位置を微妙にズラしながら、こまめにケアしたり、
レチナの穴の鼻水はティッシュのこよりでお掃除したり、とにかく手間を惜しまない様に心掛けました。
将来、子供が成長して、聞き分けが出来る様になれば「喉元すぎれば」で、
乳幼児期の大変さを忘れて、いざ手術の時に「もっとやっといてあげれば」と後悔しても、もう戻れないので。
その反面、ケアに付随する面倒な準備、テープ幅を細く切るとか、
ステロイドのテープを瘢痕のサイズにカットする等は事前に一気にやっておきました。
テープ幅は巻いたままの状態のテープを芯まで一気にカッターでぐるっと半分に切ってました。
そしたらめくったと同時に半分の幅になっているという具合に。
今、まさに乳幼児のお子さんをお持ちに方にお伝えしたいのは、
家族の食事や家の掃除なんかは何年先でも取り返しがつくし、家族にバトンタッチも出来ますが
術前矯正などは今しか出来ないと言う事と、その辛さは何年も続かないよ、大丈夫、と言う事です。
乳幼児期の手術がひと段落した後、その後の手術では自分でケアが出来る年齢になっています。
言い聞かせる事も可能です。
今が大変だと、中々先を見る事は難しいかもしれないけれど、
逆を言えば親が何かをしてあげられるのは今だけと言う事を知っておいて欲しいなと思います。
子供て、親の意向なんてほぼ無視で育っていくし、子育ての正解なんて、きって自分が死ぬまで分からないと思うけど、
口蓋裂の治療に関してはやるべき事がハッキリしているし、見た目に分かるのが悩みな分、
治療の成果も見えるので、ある意味とてもやりがいのある物だと、私は感じていました。
ーーああ、このお話3年前に聞きたかった!!
私もきゅうさんと同じ信念を持って、息子のほっぺがどんどん汚くなっても、
どんなに泣かれようとやってきましたが、時々「かわいそう」という声を聞くと、
ふっと、「そうなのか?」と思うこともありました。
あの時きゅうさんとお話できたら、そのフラフラする疑問のような、不安のようなものが無くて、「だよね!」って笑えたのに!
★きゅう:あははは。そう言ってもらえると話甲斐があります。
「可哀想に」にって、実は凄く使い方が難しい言葉なんだなって次男に教えてもらいましたね。
たぶん、それを言ってくる人の大半は他意はなく、ただ本当に「痛々しくて可哀想」とゆーだけなんでしょうが、
受け取る側としては経過を知ってるが故に「傷が出来る→口蓋裂だから=口蓋裂が可哀想。え⁈」みたいになっちゃうんだと思います。
凹んでる時、悩んでる時ってゆーのは、励まされても同情されても辛いもの。
そこを客観的に自分で気付いて自分の受け止め方を変えるしかないんですよね。
なので私は「そーやろ〜!痛々しいやろ〜。でも将来の為に頑張ってもらってるねん!」と返していました。
そうすると、大半以外の他意のある意地悪で言ってくる人は離れるし、
大半の他意のない人は「そうなんや!何でそんなんせなあかんの?」と、理解しようと歩み寄ってくれます。
言い方悪いけど、次男にママ友をふるいにかけてもらったと思ってます。(笑)
ーー幼児期はママのトレーニング期間でもありますね…。
幼児期から幼少期へ成長していく中、子供へはどう接していくことが良いでしょうか。
★きゅう:治療に対して小さい頃は、親がやってあげることが多いけど、
親が直接やることはどんどん少なくなっていって、逆にどんどん本人がやることが多くなっていくから、
親じゃなくて本人が治療に向けて自分でできるようにしていくことが大事だと思います。
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(後編へ続く)
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