『口唇口蓋裂児の子育てー思春期ー』後編 ~Leonine interview vol.4


  • 2019年7月12日
  • Leonine
Leonineスタッフよりお届けする口唇口蓋裂に関係する当事者の方へのインタビュー記事、Vol.4は後半は『口唇口蓋裂児の子育てー思春期ー』 治療において親が主体の乳幼児期を経て、治療においても生活においても子供自身が主体となる小学生という時期。多感であり、まだ小さな存在である子供にどう接していくか。そしてどうやって導いてゆくのか経験をもとにお話しいただきました。

ーーさて、続いて小学生時期なんですが、治療についてはまだ本人には自覚がないと思いますが、

子供はいつ頃から自分で治療について向かい合い始めるのでしょうか?

きゅうさんのところは疾患についてはどうやって伝えましたか?

 

★きゅう:口蓋裂というものを意識したり、通院が「普通」の事ではないと気付き始めたのは小2頃だったかと思います。

たぶん、ちょっと遅い方ではないかな。

最初は「何で兄ちゃんは阪大行かへんの?」から始まったと記憶してます。

口がくっつかずに生まれた事、今までどれだけ治療や手術を頑張ってきたか

それは皆ではなく、限られた人である事を、生まれた時の写真などを見せながらゆっくり話しました。

 

でもやっぱりまだ難しかったようで、理解は出来ていなかったですね。

そうこうしてる内に骨移植の手術の日取りも決まり、どう説明すべきか悩んでいた所、

これはもう、運が良かったとしか言いようがないんですが、

ちょうど、小林えみかさんが出演された仰天ニュースが放送されたんです。

その録画を一緒に観ながら

「あ、これこれ。これ、次男と同じ病気やで。ほら、阪大映ってるわ!」

と、ごく自然を装って知らせました。

 

それまで遊びながら流し見していた次男は遊びの手を止めて食い入る様に観始めました。

そしてそれからは何ヶ月もの間、録画を幾度となく見返していましたね。

そこからtwitterで、えみかさんに連絡を取り、阪大受診が同じ日がある事が判明し、会う事に。

 

それからは次男のお見舞いにも来てくれたり、我が家にも遊びに来てもらったりしていたら、

いつの間にか「えいみーちゃんも頑張ってるから俺も頑張らなな」が合言葉の様になりました。

 

お子さん自身の性格にもよるでしょうが、やはり、少し前を歩く「同志」がいるのは治療の励みになるのかもしれません。

最近は改めて話し合ったり、聞いてみた事はないのですが、次男なりに

『自分は口蓋裂である』と言う事を受け入れられてる様に感じています。

 

ーー良いタイミングでえみかさんの放送が見れたんですね!

そういった他にもいる「同志」の存在は確かに受け入れるのに、とても良い効果を生み出すことが期待できますね。

えみかさんのような先輩でもいいですし、最近だとツイッターで10代〜20代の子が交流することによって、

治療や自身の問題について向き合って行っている姿を見かけます。

レオナインでも、家族会や交流会で小学生の部の必要性を感じているのですが、

治療もますます多岐にわたる時期ですし、難しい年頃のような感じがするのですが、きゅうさんのご意見をいただけませんか?

 

★きゅう:そうですね、実際問題、学童期の部は難しいと思います。

私は上の子関連の勉強会やサークルにも時々参加するのですが、学童期に入ると、平日の昼間に親だけで集まる事が多いです。

口唇口蓋裂サークルでもそういうのがあるといいなと思います。

中高生になると当事者たちの集まるサークルはありますが、小学生は人見知り・照れ等が先立つかもしれません。

かと言って、仲間に出会える機会はあった方がいいんだろうなと言う思いもあるので、どういう形がいいのだろう?と考えはしているのですが。

息子自身も、からかいに遭ったりしても私に話さない事が増えてきました。

そろそろ言語訓練の時は私が席を離れる時間を作ってみるべきかな、と考えています。

 

ーー成長著しい年頃ですから、なかなか難しいですね。

息子さんは小6ですが、言語訓練の時は一人にしてみようということですが、自分自身で先生と治療について話をしたりしているんでしょうか。

また、今後どんな風に治療に関わっていこうと思っていらっしゃいますか?

 

★きゅう:予約は月1回1時間で取っているのですが、治療については、息子だけで進め方の判断はまだ難しいと思うので

先生に相談して、可能であれば前後30分ずつで、息子と私が入れ替わりでお話しする形が取れるといいかな、と考えています。

私に言えない事、逆に私にしか言えない事、をスムーズに病院側に知ってもらう手段になるのでは、と思っています。

治療についても「必ず必要なわけではないけれど、困っているならやってみる?」と聞かれる事が増えてきました。

私自身は、出来る事は何でもやっていきたいという気持ちですが、息子は困っていてもやりたくないかもしれません。

「どうしたい?」と本人の意向を聞く様に心掛けてはいますが、私から漂う空気感が「嫌だ」と言わせていないのかも…と勘ぐる時があるので、

そろそろ私が口出し出来ない環境を作った方が良いかな、と思っています。

反対咬合等の機能面と違い、発音による問題は、ある程度、周りの理解と本人の気持ちの持ち様な部分もある様に感じます。

からかいや、伝わりにくい不便さをカバーする力を別部分でつける事も可能なので、無理強いはしたくないけれど、

やはりなるべくコミニュケーションに不便さを感じさせたくない…と思ってしまうので。

無理に治療を薦める事で、治療中の苦痛と、カバー力の芽を摘む事もあるかもしれないとも考えてしまっているのが現状ですね。

 

ーー親の関わり、難しいですね…青年期になればまた違うんでしょうが。

最後になりますが、今、息子さんへメッセージを送るとすれば何と伝えますか?

また、育児中のご両親へ伝えたいことなどあればお願い致します。

 

★きゅう:そうですね、息子に伝えたい事、と言うか、伝えている事、になるのですが、

常々言っているのは、何かひとつでもいいので好きな事を見つけなさい、と言う事です。

周りの評価や、自分自身が周りと比べてしまう様な事のない位、

ただただ純粋に好きで好きでたまらない物に出会って欲しいと思っています。

その為に、色んな事にチャレンジして欲しいし、そのサポートはお父さんもお母さんも頑張るから、

1人で考えて遠慮なんかせず、どんどん相談してね、と言ってます。

そして皆様へ伝えたい事は「案外、親が思うより子供は強いよ!」って事です。

可哀想とか、気の毒だとか、ごめんね、と思うより、頑張っている事を認め、

愛している事を伝えてあげて欲しいなあと思います。

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前編の矯正写真の結果がこちら。
左上 小1 、 左下 小2 、右上 小3 、右下 現在 小6
小3 オトガイ骨移植後。
入院中は少し腫れるのと、頬や目元にアザが出来ました。
術後に2週間程で定着しなかった骨が歯茎からポロっと出てきました。

 

右二枚が現在。
裂のあった右側犬歯の後ろが一本欠損。
現在まだそのままですが、将来的にインプラントの可能性ありです。
前歯の写真は反対咬合、隙間ももちろんですが
中心線のズレが治っている事にも注目していただけるとよいかと思います

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