しごと選び Vol.7:舞台俳優(後編)


  • 2018年11月22日
  • Leonine
社会で活躍する口唇口蓋裂疾患者ご本人による、キャリア選択ストーリー。vol.7後編。
スーツアクターから舞台俳優への転機。そして自分自身の疾患をプラスに変えることもできる世界もあるということを教えていただきました。

舞台役者への転機

スーツアクトから舞台へ道を広げたのは、仕事をはじめて5年目位の事です

いい加減、後輩に殺陣やアクションを教える事が必要になり、ちょっとノウハウを学ぼうと

T.P.O.Office(現在2.5次元舞台のアクション振り付け等をされています)の ワークショップに

初心者ぶって隅っこで大人しく参加したら主宰の方にすぐにバレまして、

当時企画されていたプロモーションライブの出演に誘われたんですね 。

 

高校や中学で学生的チャレンジとしての経験はあるものの、

顔を出しての芝居は自分の中でもうしないなぁと思っていた所での機会で、

ちょうど一から演技も勉強し直そうと参加を決めました。

 

そこでその企画での演出を担当していた劇団inoccent sphireの西森英行さんと出会ったのが

運命のようなものでして、本来、その他大勢的な役だったのが、

主役と二人の大舞台シーンを設定して下さって(大笑)

 

その後も彼の劇団からお声掛けを頂き、すっかり小劇場の世界に引き込まれてしまいました。

 

役者ってもうちょっとビジュアルが大事じゃんと思ってたり、

自分の発声や顔には自信がなかったりで、舞台の世界は無理って思ってたんですけどね

一芸は万事に通ず…といいますか、殺陣やアクション・ダンスだけでなく、身体表現としての演技の積み重ねや、

学生時代にやったアレコレがちゃんと舞台でも評価される事に気がついてしまったら…

 

もうやめる理由なんてありませんよね(苦笑)

 

今では子供もいますし、イベント業も続けてますし、

似たような仕事をしてる妻の手伝いやらで、 生粋の役者の方々程の活動はできないのですが

『観てくれる人が一人でもいるのなら芝居なんていつでもどこでもやれるものでしょ?』

という妻の言葉もあり、フリーのままやれる時に舞台に上がらせて貰ってます。

劇団命×語り鼓『鈴鹿山の白纏丸』より。カメラマン/斧口智彦

 

幼い頃もらったワクワクを還元、役者としてのやりがいとは

役者としてのやりがいは「別の視点に立てる事」を自分だけでなくお客さんにも持って貰える所でしょうか 。

 

殺陣なんか特にそうですが「加虐」と「被虐」の様なリアルではあまり考えない二面性が必要になります。

そういった別の視点や物語についてエンタメと共に示す機会がある、

これを生身でやれる表現方法ってそうそう無いと思います。

 

演目がきっかけで社会の事を考える機会も増えましたしね。

 

スーツアクト&ショーの仕事としてはもう、

自分が幼い時にもらったワクワクをそのまま還元してる感じです。

朝から会場取りをして本番まで楽しみに待って下さってる親子連れの方が

一日の出来事としてちゃんと楽しんでもらえる事、その為に何ができるかを考える事

それが歓声や応援で還ってくれば、ああこの仕事選んで良かったなぁって思います。

 

あとやっぱり自分の子供を見て思うのですが、

ショーって子ども達が一番最初に出会う「お芝居」なんですよね。

夢という空想を現実につなげてく最初の機会、

それをちゃんと大事にしていきたいなというのが最近の一番の課題であり目標です。

 

ビジュアルと発音に対する苦労もあった

過去感じた苦労。

これはもう一つは完全にビジュアルですよね(苦笑)

 

数年前、地元の新選組のお祭りで土方歳三として寸劇で殺陣や芝居をやったのですが、

まぁアニメブームもあり訪れた歴女の方達がネットで『残念な土方』と書かれていたのを偶然見てしまいまして

まぁこればっかりはどうしようもないよなぁ~と 、凹みましたけどね(笑)

 

…なもんで、写真はどうにも苦手です

 

最近はネットで稽古日誌を上げたり、チラシ用の写真を撮ってブロマイド販売をする劇団も多いのですが

どうにも苦手で直視できなかったり、写真を撮る輪にも無意識に逃げちゃったりしちゃいます

まぁ慣れましたけどね。

 

でも、最近カッコいいという声も頂く事もあり(レオナインの運営スタッフの方からも言われたのですが)

「カッコイイとは何ぞや」と自問自答する毎日です、紅の豚的なアレですかね。(大笑)

 

 

もう一つはやっぱり発声ですね

上顎が発達しきってない故に、骨格で声を響かせるのが通常より難しいのか普段の声が小さくて、

そこから大きな声を出すのは結構苦労します。

 

朗読や語りをやっている妻の言葉ではやっぱり口唇口蓋裂の方は骨格のせいか独特の響きがあるそうで、

昔はそれが嫌だったのですが「そうそう普通の人が出せる響きじゃないのでかえって武器だ」と言われ肯定できるようになりました。

 

面白いのが歌うための発声はそんなにこの症例は影響しないみたいなんですよね。

「喋りが独特なのに歌になると上手い」ともよく言われてステージ歌う事も多くなりました。

 

…あ、あとアレだ

巻き舌できないんですよね、口の構造的に、それだけはすっごく悔しい(大笑)

己を知りさえすれば可能性は無限大!

<これから将来を考える子供たちへのメッセージ>

まぁ個人では色々ありますが、舞台という世界は個性重視なのか何なのか、実際カミングアウトしても

「あ、そうなんだ、ふ~ん」

…な感じで済まされる事が多いので、 一番人前に立つものでありながら、

そんなにこの症例としての壁はないものかもしれません。

 

とはいえ、やっぱり壁となるものがあるのは確かですが、

世界の広さ(それは寛容と責任と容赦の無さが入り乱れますが)を怖がらす受け入れさえすれば

『乗り越える』だけでなく『抜け道』や『別の道をさがす』とか色々やり方が見えてくる

もちろん『ぶち壊す』ってのもアリですしね(笑)

 

大事なのは方法ならいくらでもあるよって事なんじゃないかなと思うので、

このレオナインの様に今はもっと情報を共有する機会をみつけて、

心配なら思い切って飛び込んでみるのもアリだなって思います。

 

今はネット含めて情報を調べたり公開したり、

共有できる場が昔より多いので、自分の子供の頃よりも可能なはずです。

 

何の情報もなかった自分はエラい遠回りをしてしまいましたからね~

 

結局、演劇ってのは人間を演じるのですから引出しはいくつあっても多過ぎることはない

色々やってみて得たものはちゃんと武器になります

 

我が身ひとつが武器の世界ではありますが

己を知りさえすれば可能性は無限大です、是非是非チャレンジしてみてください!

 

 

※掲載写真全て禁転載

 

OGA-SAN twitter @danepapamax

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